失業とは何か

まずは、最初に雇用保険法における「失業」とは、どのようなことを言うのか、定義をみましょう。

 

失業給付をもらうには、「失業」していないといけないわけです。一般の人が思う「失業」とは、会社を辞めれば、働いていないのだから、失業でしょ?となりますよね。しかし、法律上は、少しばかり違います。

雇用保険法においては、「失業」とは、「離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう」となっているんですよ(雇用保険法第7条)。

 

「労働の意思」がない人、「労働の能力」がない人ではダメなのです。しばらく働かないでおこう、という人は除外なのです。

「労働の意思及び能力」があるにもかかわらず、それなのに、職業に就くことができない状態になったことなのです。それでなくても、国の財政には限りがあるので、働く気もないという人には、失業給付は対象外になってしまうんですね。

 

「会社を辞めた」=「失業給付もらえる」ではありません。

なお、念のため、「労働の能力」とは、どのように判断するのかと言いますと、行政手引という行政機関内部の手引によると、労働に従事し、その対価を得て自己の生活に資し得る精神的、身体的、生活環境上の能力をいう(行政手引51203)となっていて、精神力、体力、知力等を総合的に判断することになっています。

 

ですから、病気で入院中という場合には、労働の能力がないと判断されてしまうことになるでしょうが、これはケース・バイ・ケースでしょうね。「総合的に判断」となっています。また、障害者というだけでは、ハローワークには、「障害者枠での雇用」がありますので、これをもって、労働の能力がないとは言えません。

 

私が知っているだけでも、難病をかかえながら、働いている人もいます。腎臓病で身体障害者手帳1級を持ちながら働いている人、歩行が困難で、車いすを使用しながら働いている人もいます。

 

話を雇用保険法に戻しましょう。雇用保険法には、「求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない」(雇用保険法第10条の2)という努力規定があります。失業給付など支給を受けるからには、「誠実かつ熱心」でないといけないよ、そうする責任があるよ、ということです。

 

失業給付は、頑張って求職活動を行っているのに、それでも職に就けないという場合のためのものなのです。

 

すぐには働くことができない場合(労働の意思はあるのに)

なかには、病気や怪我をして退職した人もいるでしょう。また、親の介護、入院などで看護が必要になって、どうしても退職せざるをえなかったという人もいるでしょう。結婚して退職したら、その後すぐ妊娠がわかって出産することになり、その間は、働くことができないという人もいるでしょう。

 

雇用保険の基本手当を受けられる期間は、離職した日の翌日から起算して1年間となっています。上記のような人は「すぐには」職に就くことができないわけですから、1年なんてあっという間に来てしまいます。

 

では、諦めるのか。

本人の病気やケガ、妊娠、出産・育児、親族等の看護・介護等のために退職後引き続き30日以上職業に就くことができない状態の場合、受給期間の満了日を延長することができるのです。ただし、延長の手続きが必要です。延長の手続きによって、離職した日の翌日から起算して1年間を最大3年間延長させることができることになります(雇用保険法施行規則第31条)。

 

延長の手続については、職業に就けない状態の31日目から1か月以内に、受給期間延長申請書に離職票(受給資格の決定を受けていない場合)、または、受給資格者証(受給資格の決定を受けている場合)を添付のうえ、ハローワークに提出することになります。

ハローワークへ行くことが難しい人の場合、「受給期間の延長申請は郵送又は代理人による申請も可能です」となっていましたので、詳しくは、お住まいのハローワークに電話してみるといいでしょう。最初から、諦めてしまうのではなく、このような方法もあるということを、頭に置いてください(まわりの人で該当しそうだと思う場合は、教えてあげるといいですね)。知っているといないとでは、違いますからね。

 

次回は、上記と反対に、最初から、退職後に働くつもりがなかった(再就職の意思がなかった)場合などで、離職票をもらわなかった時のことをみていく予定です。