最近、いろんな場面で副業が取り上げられるようになりました。

平成28年3月には、内閣府で、「600兆円経済の実現に向けて~好循環の強化・拡大に向けた分配面の強化」として取り上げられた中に、「副業」の文字があります。

 

「600兆円経済の実現に向けて~好循環の強化・拡大に向けた分配面の強化」

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/0311/shiryo_02.pdf

 

財政の健全化のためにも、所得の増加を通じて、成長して行かなければならないという危機感があります。

 

日本は、少子化で人口減少となることがわかっていますから、多様な働き方へと移っていく必要があります。少子化対策と同時に、女性の就労支援、高齢者の就労促進、外国人の人材活用など、一億総活躍社会へ、です。

まわりをみていても、新聞報道をみていても、政府がそちらの方向にいっていることはわかることでしょう。

終身雇用もどうなるかわからない時代ですから、スキルアップの助けとなるメリットもあります。また人生百年時代ですから、第二の人生についての準備としても副業は認める方向へと動いていったのです。

しかし、法制度が副業時代に追いついていないようです。

現在、厚生労働省では法整備のための検討会、審議会を行っている最中です。

「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」は令和元年8月に報告書をまとめましたが、それ以外の雇用保険や労災保険については、まだまだ審議中です。

 

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副業と労働時間管理(健康確保措置、割増賃金など)の問題はまだまだ続く

 

副業を希望する人は年々増加。一つの会社に縛られない

平成28年の時点ですでに、「副業を希望する者は、近年増加(2012年合計368万人)」していることが指摘されています。上記の資料でも、「総務省就業構造基本調査」からグラフが作成され右肩上がりになっていることがわかります。

 

そのときの指摘でも「低所得者層と、男性の中高所得層」において、副業や兼業、すなわち、今の仕事を続けながら、他の仕事もしてみたい」と思っている人が多くいることがわかりました。

低所得者層は、もっと所得を増やしたいと思うでしょうし、高所得者であっても自分の技能を活かしたいという希望があることがわかります。

今の副業解禁!と言われる前からも、一部の企業の中には副業をしてもよいと認めるところもあったようです。

 

そのため、上記資料でも「キャリアの複線化、能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大や大企業人材の中小企業・地域企業での就業促進などの観点から、積極的に兼業・副業を促進してはどうか」と提案がなされていました。

 

もちろん、労災の問題もあるので、法的対応は必要です。副業や兼業した場合の「総労働時間の把握や雇用保険の適用関係など、兼業・副業に必要な環境整備について検討し、ガイドライン等を示すべき」ということが同時にいわれていました。

 

賃金の引き上げも考えられていきますが、同時に、副業も可能な社会へと大きく転換されていったのです。

 

「副業を制限」から、「合理的な理由なく副業を制限できない」へ

平成29年3月の働き方改革実行計画においても、副業や兼業を希望する人は増加していることが欠かれていました。しかし、まだまだそれを認める企業が少なかったのです。

 

企業側には安全配慮義務がありますから、従業員を雇い入れたら命や身体の安全を確保して労働できるように必要な配慮をする義務があります。従業員の健康管理を無視することはできません。

 

そこで「長時間労働を招かないよう、労働者が自ら確認するためのツールの雛形や、企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定」することで、「就業規則等において本業への労務提供や事業運営、会社の信用・評価に支障が生じる場合等以外は合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化」するという、いわば、今までの考え方とは逆転した考え方にたったわけです。

 

そうなりますと、今までは、ひとつの会社で8時間働くこと(中にはそれ以上)が前提だったわけですから、複数の会社で働くとなるとどのように社会保険や雇用保険などを考えていったらいいのか、という問題がでてきます。

 

社会保険や雇用保険は、「保険料」を徴収するからです。さらには、労働時間管理や、健康管理をどうするかという問題もあります。

そして、労災が起きたらどうするかという問題が残されていました。

中には、朝8時から夕方5時まではA社だが、夕方6時から夜10時まではB社で働く、その場合、長時間勤務で過労死となったら、どうするのか、ということもあるでしょう。

A社からB社へ行く途中で通勤災害となったら、一体どちらが?という問題もあるでしょう。

 

労災保険の保険をもらう時の基礎となる「給付基礎日額」は、原則として、労働基準法の平均賃金により算定されていますから、本来ですと、「業務災害の発生した事業場から支払われていた賃金」をもとに平均賃金が算定されます。

それを基礎として給付基礎日額が決まります。

 

しかし、それでいいのでしょうか。今まで、A社とB社の両方から給与をもらっていた人が、例えば、B社で労災が発生、となったらB社だけの金額で、決められるわけです。

労災保険とは、「労働者が被災したことにより喪失した稼得能力を填補することを目的」ですから、それでは不十分、ということがわかります。

 

そこで、このような二重に働いている人の給付基礎日額をどうやって決めるか定めるかということが検討課題になります。

そもそも今の労災保険や雇用保険は、終身雇用の時代に作られたものですから、複数の会社で働くことを前提とされていません。労災認定の制度も1社で働くことが前提です。

中には、A社とB社での合計労働時間が1社のみで働いた場合の残業代として考えたら、過労死ラインなる場合も発生することでしょう。

時間外労働として考えたら、その時間が100時間を超えるということはありえます。

 

もしこれが一つ会社に勤務として考えたなら労災認定対象となるのに、もうひとつ会社の労働時間を合算しないとなると、たとえ、過労死ラインであっても労災にならなくなってしまいます。

これら労災保険、雇用保険の問題は早急に結論を出す必要があるでしょう。

 

平成29年には「労働者の健康確保に留意しつつ」という文言があったうえで、「副業・兼業を原則として認める方向で副業・兼業の普及促進を図る」という基本路線が閣議決定されました。

 

未来投資戦略 2018(平成 30 年 6 月 15 日閣議決定)では、「実効性のある労働時間管理や労災補償の在り方等について」「労働者の健康確保や企業の予見可能性にも配慮」したうえで、労働政策審議会等において検討をすすめることが決められました。

 

政府も後押しする副業。モデル就業規則も変更された

もともとなにかの法律で、「副業は禁止する」というルールはなかったのですが、以前の厚生労働省のモデル就業規則に、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の文言がありました。

しかし、それをガラッと変えたのです。

 

平成30年1月以降からは、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と、許可がないと副業ができない状態から、「できる」へと、180度転換したと言っていいでしょう。

 

副業・兼業|厚生労働省

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」「改訂版モデル就業規則」は上記厚生労働省のページでみることができます。

モデル就業規則が改訂されましたが、今も副業や兼業に関する制度的課題(労働時間・健康管理、労災保険、雇用保険、社会保険)について、検討が重ねられています。

 

副業のメリットは

働き方改革関連法が平成31年4月1日に施行され、副業・兼業が本格的に解禁されることになりました。

ここで、なぜそこまでして働くのか、副業のメリットは何かについて書いておきましょう。

本業へのモチベーションアップなどがあげられています。

気分転換になるという意見もあります。リフレッシュできるということは副業経験者からよく聞きます。一つの会社に勤務して一つの仕事だけよりも、変化はありますし、新たな経験もできます。

人脈が増えた言う人もいます。まったく別の世界の業界の知り合いができたことが宝だという人もいます。

副業をするという目的があるから、本業でも効率よく働こう、という側面もでてきます。生産性向上にもつながるわけです。

 

会社員にプラスして副業を持つことで、経営者の視点が得られたという意見もあります。

会社員のときは、年末調整でなんとかなったが、確定申告するために税金の計算をしないといけないがそのことを通じて経費の考え方が変わったという人もいます。

中には、請負契約など、業務契約を結ぶことを通じて法律を知るようになったと、視野の広がりを上げる人もいます。

 

そもそも今までの収入よりは増えるわけですから、使える金額も増えて生活水準も上がることでしょう。

本業に今までとは違った視点や発想を呼び込むことができれば、本業のほうにもいい影響がでるわけです。

 

厚生労働省のガイドラインにおいても、

メリットとしては、
1,離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
2,本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
3, 所得が増加する。
4,本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

と、ほぼ同じことが書かれていました。

 

副業で留意することは健康管理や雇用保険など

留意点としては、やはり、健康管理ですね。

厚生労働省のガイドラインにも、「就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要」と書かれていました。

 

その他にも、「職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要」だとか、

「1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要」ということが書かれていました。

 

雇用保険の適用に関してですが、現在の雇用保険は、週に20時間以上は適用となります。もし、週20時間未満を掛け持つ場合、適用なしとなってしまいます。

例えば、1日3時間半を週5日となると、週の合計が17.5時間となります。

それをA社で、17.5時間働き、B社で17.5時間働くという人は、週に35時間働きますが、雇用保険がないことになってしまいます。

 

「主たる賃金を受ける1つの雇用関係においてのみ、週所定労働20時間以上等の条件」で雇用保険適用となるからです。

 

労災については

 

労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会で現在、「複数就業者への労災保険給付の在り方について」ということが検討課題として、労災保険のことが取り上げられています。

兼業や副業において複数の会社で働く人を「複数就業者」として、この複数就業者の労災はどうするかということです。

 

現在の労災の考え方では、

その1「複数就業者の全就業先の賃金合算分」を基には労災給付の計算がされないこと、および、

その2「複数就業者の全就業先の業務上の負荷を合わせて評価して労災保険給付が行われない」ことになります。

 

先ほどの例で言えば、A社とB社の賃金を足すわけではないのです。災害の発生した事業場(例えばA社)の賃金額に基づいて給付が決められます。

ですから、A社で労災が起きたからB社にも勤められなくなったとしても、労災で補填されるのは労災の発災した事業場(例えばA社)1つだけの賃金額だけで決められます。

さらに、労災の支給決定の際にも、A社とB社の業務上の負荷を合わせて評価しないことになってしまいます。

 

そこで、ただ単にすべての事業場を合算すればいいかということですが、事業主の災害補償責任をどうするか、給付の原資となる保険料はどうなるのか、さらには、賃金額の把握方法についてなどもあって、細かい論点があります。

 

まだ中間案となっていますが、方向性はわかります。複数就業者の労災給付額については、副業・兼業先すべての就業先の賃金額を合算して給付額を算定する方向で検討するという方向性がわかってきました。

ただし、もうひとつの課題、「業務上の負荷の合算について」はまだまだ議論が続くようです。

 

労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会では、労災保険のことが議論されていますが、このほかにも「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」「複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会」のあるので、いずれこれらについても発表されることとなります。

 

雇用保険の適用はどうなるのか、分かり次第、情報を載せたいと思っています。