
会社をやめたい。だけど、退職を切り出しづらい。上司に言えない。
そのような人に代わって伝えてくれるのが退職代行サービスです。
最近、NHKなどでも報道されているので多くの人が利用するようになったという退職代行サービスですが、単に、会社に退職の意思を伝えるのが面倒だとか、会社をやめたいと言いづらいから、という理由だけではないでしょう。
中には、パワハラに悩んでとか、メンタルをやられてしまった人が最後の手段として退職代行を利用する例もあるそうです。
もちろん、気弱で会社の総務や人事に言えない、上司に退職が切り出せない、退職をそれとなくと伝えたら、イジワルされたなども退職代行を選んだ理由にあるでしょう。上司がパワハラタイプだと退職なんて、言えませんよね。
私自身も辞めることを伝えてから上司が手のひら返してきたことがあったので、気持ちはよくわかります。さらには、私がやめた後に、有給の取り決めを変えたりしたことがあったので、もう用がない人に対して、会社がどのような態度を取るのかもわかっています。
まわりの人も、これから辞める人に親切にはしてくれないこともあるでしょう。特に、引き継ぎで自分の仕事が増えてしまうという同僚には、「申し訳ないなぁ」と先回りして考えてしまう人もいることでしょう。
だから直接は言いづらいから退職代行に依頼して、ワンクッション置くという目的の人もいます。
なかなか退職が切り出せないという人ではなく、ブラック企業で夜遅くまで働かされている場合などでは、気力もなく電車に乗れないなど会社に行くことすら出来なくなっている人もいるようです。ここまできますと、本人が冷静な判断もできなくなっています。
そのような時に、「退職成功率100%」とか「会社にまったく行かなくても大丈夫」という宣伝文句をみますと、心動かされますよね。
そのような意味では、退職代行サービスもなくてはならないサービスだなと思います。ここで注意すべきは、代行業者は、弁護士事務所だけでなく、弁護士以外の法律のことを知らない代行業者も退職代行サービスをやっていることです。
弁護士以外の人ができるのは、退職の意思の「伝言」だけです。
有給未消化の交渉、未払い給与の請求交渉、退職金の請求など交渉するのは「弁護士」に限られます。
退職代行の金額も、退職代行業者とそれほど変わらないのに、なぜか弁護士よりも業者を選ぶ人が多いので、今回は、退職代行は弁護士を選ぶことをおすすめすることについて書きます。
(なお、法律事務所という事務所名称は、弁護士以外は使うことができません。弁護士法20条に「弁護士の事務所は、法律事務所と称する」となっています)。
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退職代行の費用は非弁業者も弁護士もそれほど違いなし
現在、労働相談の場でも、やめたいのに会社を退職させてもらえないという相談が増えているそうです。だからこそ、会社とのトラブルを避けて、退職代行サービスを選ぶ、という人が増えているのも納得できます。
そのような退職代行サービスを利用しようと、考えている。だけど、できるだけ料金を抑えようと値段や料金だけを調べている人もいるかもしれませんね。
確かに、調べたら、業者によっては2万円くらいでやってくれるところもあるようです。
しかし、料金だけで選んでは失敗します。そのうえ、「安物買いの銭失い」とまで思えるケースもあるのです。
退職代行を選ぶなら、弁護士がやっているのか、確認しましょう。
弁護士がやっていないサービスの怖さ、それは何も違法行為になる可能性があるから、だけではありません。
これは法律のことがわかっている人なら、すぐにその「怖さ」がわかります。
でも、中には弁護士に相談することは初めてなので、弁護士事務所では、ハードルが高いなぁと思う人もいるかもしれませんよね。退職とは結局は法律がからむことなので、最初から弁護士に相談が自分のためになるのです。
そのうえ、よくよく料金を比較してみるとそれほど違いがないことが多いのです。それどころか、弁護士以外の代行業者(非弁行為となる=非弁とは非弁護士)は安いと思っていたのに、その後のトラブル対応などで、結局高くついてしまったということさえあるのです。
最後にトータルしてみると、それほど差がなかったということになりがちです。
弁護士事務所に依頼した場合、代行サービス費用だけならだいたい5万円前後が相場です。
5万円で安心を買うか、2万円程度で、退職の意思を「伝言」することしかやってくれない業者にするか。
最後まで考えるのなら、弁護士です。
弁護士に依頼で安心を買う。万が一の損害賠償にも
ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士以外の人が報酬を得て法律相談をしたり、誰かの法律事務の「交渉」をすることは弁護士法72条違反になりかねないからです。
なぜ、弁護士に依頼したほうが安心なのかというと、代行業者は、あくまでも「代行」だけなのです。
退職の意思の伝達だけなのです。法律に関することだけでなく、会社との交渉、本人との仲介を相手側としてしまうと、非弁行為になるからです。
たしかに「退職」の意思だけを伝えてくれればいいだけじゃないか、と思うかもしれません。伝言だけで十分と。
しかし、それだけでいいのでしょうか?
もしかしたら、会社側にいる顧問弁護士からの連絡で、会社側から損害賠償請求されることが発生するかもしれませんよ。
そうなると、代行業者では手出しができません。その時になって事情の知らない弁護士に依頼して、となるともっとお金がかかるかもしれません。
法律がからむトラブルは、早期に対応が欠かせません。それを代行業者に頼んでいたから、大丈夫だと思っていたと放置していると、どんどん複雑化して不利な方向に進んでしまう危険性もあるのです。
会社からの損害賠償(業務上のミスなど)は、弁護士が間に入ると意外と、スムーズに済む場合もあるのです。実は、損害賠償する必要さえなかった、ということがほとんどだからです。
弁護士は、法的トラブル対応の経験がありますから、シロウトの一般人が会社と交渉してもスムーズにいかないことが多いのです(これは本人のみならず、法律のことを知らない代行業者も含まれます)。
弁護士なら、相手側がどのような目的で、どのような意図で行っているのか、わかることが経験上あるのです。
有給消化の交渉なども。最大のメリットは本人が出なくていい
それにほとんどの人が、会社をやめるというからには、会社とのトラブルがありがちです。
トラブルというと大げさかもしれませんが、有給取らせてくれないとか、サービス残業が重なっているとか、やめたあとに給与をなかなか払ってくれないこともトラブルなのです。
代行業者では、あくまでも「伝言」なのでトラブルに関して交渉することすらできません。
有給をすべて消化したうえで、残業代も請求して、さらには退職金のことも、という場合、スムーズかつ臨機応変に対応できて迅速に解決できるのは弁護士だからこそできることなのです。本人に代わって会社と交渉できるのは、弁護士に限られます。
内容証明を出す、有給消化を通知するなどを通じて交渉がからむわけですから、非弁業者ではできません。
なにより、「弁護士に依頼しているから」と一言で、話は済みます。会社が何かを言ってきても「弁護士を通してください」と言えばいいのです。
弁護士が出てくるドラマを見ていると、弁護士は「本人には直接の連絡はしないで、私を通してください」と言っていますよね。あれと同じです。
今は、本人に連絡を取りたいと会社から電話だけでなくラインを使って言ってくることもあるでしょう。しかし、それに返事をする必要もないのです。
あまりにしつこい場合は、その事自体を弁護士に相談できます。これは民間の非弁業者にはできないことです。
あくまでも弁護士以外の人は法的トラブルに対応できないのです。
さらには、ダメもとであっても、損害賠償だ!とばかりに会社から「ふっかけてくる」場合(会社の経営者がみんながみんな法律を知っているとは限らず)もあるかもしれません。
間に弁護士が入ると、そうはいきません。すべて、「弁護士を通じて」となりますから。たまに、会社側弁護士さえ、言いがかり的なことまで言ってくることもあるそうです。会社側弁護士ですから、会社の立場にたっているわけですから。
会社を退職することも労働契約に関することなのですから、退職の意思を伝えるだけ、の代行業者ではなく、弁護士に依頼しましょう。
会社側も顧問弁護士がいるならともかく、会社側が法律のことを知っていなくてむちゃくちゃを言っている場合もあるのです。
弁護士は会社側の意見も聞いたうえで、交渉しますから、本人と会社の直接対応よりも、法律のことがわかる人が間に入るという利点もあります。
損害賠償をすると言ってくることに関しても、民法の不法行為、債務不履行がからんでくるわけですから、餅は餅屋の弁護士に依頼です(労働者に対する損害賠償は、すべてが認められるわけではない)。
会社側からの「変化球」的無理難題に対応するのは、本人だけでは無理でしょう。最初から依頼しておけばよかった。。とならないようにしてください。
退職代行といいながら失敗する例も
代行業者(非弁)の中には、会社とかえってトラブルになってしまい、そのまま放置する例も出てきているとか。
その場合、その代行業者が困るよりも、本人が困ることになるのです。
非弁の代行業者ではできることが限られますから、弁護士なら、この人の例だと「これとこれとこれ」を交渉しないといけない、ということがすっと頭に浮かびますが、代行業者はもとからできないから思いつきません。
思いついたとしても、労働者の権利を代わりに代行!というわけにはいかないのです。
未払い賃金があるなとか、有給休暇を取れるようにしてから退職してもらおう、ということが思いついたとしても、代行業者では「本人の代わりに動きます」とはいかないのです。
最悪の場合、そのまま代行業者が逃げてしまったら、どうしますか?
そこまでいかなくても最初の説明と違う、お金を払ってからの動きが遅いなど、あるかもしれませんね。
雨後のタケノコのように退職代行業者が出てきているので、もしかしたら、何かしら行政のほうで規制することになって業者が逃げてしまう可能性もゼロとはいえません。
会社側も突然の退職で、引き継ぎがうまくいかないこともあるでしょうから、責任をもって、本人と間に入ってくれる、となると代行業者では心もとないことがわかります。
そもそも「退職拒否」ということは会社はできない行為なのですが、もし会社側と何かあった場合、内容証明を出すにせよ、何かしらの対応ができるのは、弁護士なのです。労災のことも相談できますよ。
弁護士なら有給のこと退職金や残業代の請求までも
臨機応変に対応となると、民間業者では結局のところできないことが多すぎるのです。
有給未消化について、残業代の未払いがある、退職金が払われない、退職に関するトラブルは、想像もつかない方向への動きになることさえあるのです。
中には、雇用保険の離職票がもらえないだとか、会社側の協力が必要な場面もあるのです。
本人の代わりに、電話で退職の意思を伝えて終わり、ということにはならないのが常なのです。
退職代行業者は、「退職」に関することの意思は相手の会社に伝えるけれど、その後のフォローはしてくれない、ということもあるかもしれません。
料金が安い場合は、安い理由があるのです。退職代行業者もボランティアでやっているわけではありません。料金が安いところは、手抜きでもしないとペイできませんからね。
弁護士に依頼する場合でも、弁護士事務所(法律事務所)によって料金の体系が違いますので、未払い賃金や残業代の請求、退職金の請求は退職代行費用とは別に費用がかかるのか、どのような費用体系になっているか(成功報酬のところが多い)、前もって確認しましょう。
法律事務所はどこも同じ、というわけではありませんからね。
まずは弁護士に隠し事せず相談を(守秘義務ありだから)
安かろう悪かろう、というのは、他人が言う分にはいいのですが、こと、自分の問題となると、それだけでは済まなくなります。
何か問題が生じたら、結局は、自分で尻ぬぐいしないといけません。未払い賃金、有給休暇消化などで交渉するには、代行業者ではなく自分でできるかもしれませんが、弁護士を通したほうが確実性が増します。プロだからです。
法律のことがわかっていて、対応もできる弁護士に相談するのが、結局は正解なのです。
失敗しないためにも弁護士に退職代行サービスを頼みましょう。
また退職代行は、単に退職する意思を伝えるだけだから、と軽く考えがちですが、会社名、会社の電話番号から人事の担当者などいろいろな情報を渡さないといけません。
それだけではありません。あなた自身の情報(名前だけでなく、電話番号から、住所なども)も伝えないといけませんよ。弁護士には、守秘義務もありますから、個人情報を民間業者に渡すよりは、ずっと安心です。
弁護士に相談するのは、ハードルが高いという人もいますが、相談料は無料で、実際に依頼してから報酬が発生するとか、退職金や未払い賃金、未払い残業代などの問題も、成功報酬で着手金なし、というところもあります。
弁護士は「料金が高い」とイメージだけで「思い込み」しないほうがいいです。いくつか法律事務所を調べてみるといいです。
自分が依頼してもいいと思える弁護士に巡り合うには、まずはメール相談です。結局は人と人の相性になりますからね。メール相談なら、相談料が無料となっている事務所はありますよ。
この弁護士は実績が多くてやり手、と思っていたが、退職までのやり取りの最中に、どうも相性がよくないな、なんてことになる前に、法律事務所に無料の相談だけでもしてから決めるのがいいです。