
今回の新型コロナでは、非常事態ということで、雇用保険においても特例が設けられています。
令和2年2月25日以降に、新型コロナに関係する理由(以下に書きます)で離職した人は、いつもでしたら、一般の離職者になるところを、「特定理由離職者」にするという特例です。
「特定理由離職者」となると、失業給付の給付制限を受けません(いわゆる3ヶ月待ちというもの)
「自己都合」による離職ではありますが、「正当な理由のある自己都合離職」として扱われます。
また中には、同じ理由(新型コロナに関係する、正当な理由のある自己都合離職)なのに現在、給付制限期間中という人もいるかもしれませんね。
そのような既に給付制限期間中、という場合であっても給付制限期間が適用されない特例措置があるのです。
新型コロナでの特定理由離職者とは?
それでは、どのような理由が新型コロナでの「特定理由離職者」なのでしょうか?
厚生労働省が出しているパンフレットでは、以下の人が「特定理由離職者」になります。
①同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
②本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
③新型コロナウイルス感染症の影響で子(小学校、義務教育学校、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
どれも「自己都合離職」という言葉が見えます。
しかし一般の自己都合離職による失業給付とは異なります。
「特定理由離職者」として扱われます。
大阪労働局のホームページにパンフレットがありました。
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202005121451.pdf
すでに上記の理由で離職したが、待機期間満了して給付制限期間中という人なら、早い期間から失業給付をもらえることになる、ということです。
また、これからの離職する予定の人も、上記の理由なら、会社の離職票をもらう時にぜひとも、会社の担当者に説明しておいてください。
ハローワークでの手続きの時も、念のため、言っておきましょう。
特定受給資格者と特定理由離職者とは
ここで、そもそも「特定理由離職者」って何だろうと思う人もいるかもしれませんね。
以前にも雇用保険(失業給付)には種類があることを書きました。
世にいう、会社都合と自己都合による離職です。
これを雇用保険においては、大きく3つに分けられます。
- 特定受給資格者
- 特定理由離職者
- 自己都合での離職者(一般離職者)
会社都合による離職、すなわち会社による解雇、会社が倒産したなど自分は働き続けたいと思っても続けられない人がいます。
この場合、会社都合によるものなので、雇用保険でも優遇されます。手厚い保護があります。
このような会社都合による離職者を「特定受給資格者」と呼びます。
年齢によっては、失業給付の期間も長いことがあります。
それといわゆる3ヶ月待ちという給付制限期間がありません。
7日間という待機期間(これは会社都合でも自己都合でも誰もがかかる期間)はありますが、すぐに失業給付が始まります。
それに対して、自己都合による離職(一般の離職者)は、7日間+3ヶ月という待機期間と給付制限期間があります。
その真ん中にあるイメージが「特定理由離職者」です。
自己都合退職ではあるが、やむを得ない理由で辞めることになる人たちです。
7日間という待機期間はありますが(これは誰にでもある期間)、3ヶ月待ちというものがありません。
これの特定理由離職者、特定受給資格者については、ハローワークのページに説明があります。
特定理由離職者については、けっこう広い範囲の理由が認められていることがわかります。
以下、ハローワークのページより「特定理由離職者」の説明を引用します。
1,期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
(「特定受給資格者の範囲」の2.の(8)又は(9)に該当する場合を除く。)
※補足1 労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確約まではない場合がこの基準に該当します。
2,以下の正当な理由のある自己都合により離職した者
※補足2 給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
(a) 結婚に伴う住所の変更
(b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
(c) 事業所の通勤困難な地への移転
(d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
(e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
(f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
(g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
(6) その他、「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等
ハローワークのページで確認
上記の範囲の概要に書かれたものにプラスして、今回は新型コロナでの雇用保険の特例がプラスされた、ということです。
そのほかにも基本手当を受ける期間を延ばす特例も
雇用保険の受給期間は、離職の日の翌日から起算して原則1年間ですが、疾病、出産、育児等の理由により30日以上職業に就くことができない日がある場合には、受給期間の延長が認められます。
雇用保険には1年間にもらうという制限があるから、失業給付をもらいたいなら、すぐにハローワークに手続きに行ったほうがいいよ、といわれるのは、「原則1年間」というものがあるからです。
簡単に言えば、会社を辞めた日の翌日から数えて1年の間なら、失業給付出すよ、ということです。1年以内にもらい終わってね、ということです。
ただし、理由がある人はこの「原則1年間」というものが伸びます。
今回の新型コロナでは、以下のような場合も受給期間延長が可能になります。
1,新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からハローワークへの来所を控える場合
2,新型コロナウイルスに感染している疑いのある症状がある場合(風邪の症状や発熱がある場合、強い倦怠感や息苦しさがある場合など)
3,新型コロナウイルス感染症の影響で子(小学校、義務教育学校、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となった場合
これらの理由でも、受給期間を延長することができます。
人によって異なる90日間とか、150日間という日数は伸びませんよ、勘違いしないでください。
たとえば150日もらえる人なら、離職から1年以内に150日という日数を終えてねということ。
ただし、1年間の受給期間の延長といっても自動的には延長しませんから、前もって手続きする必要があります。